就業規則で副業は禁止できる?届出制・許可制の作り方を社労士が解説

こんにちは、はしざき社会保険労務士・行政書士事務所の橋崎です。
最近、高知県の中小企業様から「従業員に副業を認めてよいものか」「就業規則に副業のルールをどう書けばいいか」というご相談を受ける機会が増えています。
働き方の多様化にともない、副業・兼業を認める企業は年々増えていますが、いざ規定を整備しようとすると、全面禁止にすべきか、許可制にすべきか、届出制で十分なのか、判断に迷う経営者様も少なくありません。
この記事では、就業規則で副業をどこまで制限できるのか、規定を作る際に押さえておきたいポイントを整理します。
この記事の執筆者
はしざき社会保険労務士・行政書士事務所 代表
橋崎 正
(社会保険労務士 / 行政書士 / 1級FP技能士)
鳥取市出身。宿毛市在住。
こうち生活協同組合に30年以上勤務し、配送業務および共済・保険業務に従事。
累計2,500件を超える相談対応の経験を持つ。
社会保険労務士・行政書士・1級FP技能士の3つの資格を持つ。
障害年金や労務の手続き、相続・遺言の書類作成、その後のお金の見通しまで、
相談先を分けずに、ひとつの窓口で対応できることを強みとしている。
高知県全域からの相談に対応。
「困ったときに気軽に相談できる存在でありたい」を理念に、
制度の説明にとどまらず、生活・仕事・事業に関する不安を整理し、
実務に即した支援を行っている。
この記事で分かること
- 就業規則で副業を全面禁止することができるかどうか
- 副業規定の3つのパターン(全面禁止・許可制・届出制)の違い
- 副業規定に盛り込んでおきたい具体的な項目
- 副業の労働時間を通算管理する際の注意点
- 就業規則に副業の定めがない場合のリスク
1. 就業規則で副業は禁止できる?結論から言うと
結論から言うと、就業規則で副業を「一律・全面的に」禁止する規定は、法的に無効と判断されるおそれがあります。就業時間外の時間をどう使うかは、本来、従業員の自由に委ねられているためです。
押さえておきたい前提
- 副業・兼業そのものを禁止する法律はない
- 就業時間外は、原則として従業員の自由な時間である
- 会社が制限できるのは「合理的な理由がある場合」に限られる
- 厚生労働省もモデル就業規則で副業・兼業を認める方向を示している
個別の裁判例の判断は、会社の業種や副業の内容、就業規則の具体的な文言によって異なります。自社の規定が有効かどうかは、個別に確認することをおすすめします。
2. 副業を制限できる法的な位置づけ
副業・兼業は、労働者の権利として尊重される一方、会社側にも正当な利益を守る必要があります。厚生労働省の「副業・兼業の促進に関するガイドライン」では、次のような場合に限り、副業を禁止または制限できる可能性があるとされています。
副業を制限できる可能性がある場合
- 労務提供上の支障が生じるおそれがあるとき(過重労働による本業への影響など)
- 業務上の秘密が漏えいするおそれがあるとき
- 競業により自社の利益が害されるおそれがあるとき
- 自社の名誉や信用を損なう行為、信頼関係を破壊する行為があるとき
逆に言えば、これらに該当しない副業まで一律に禁止することは、合理性を欠くと判断されやすい点に注意が必要です。
3. 副業規定の3パターン(全面禁止・許可制・届出制)
実務上、副業に関する就業規則の定め方は、規制の強さに応じておおむね次の3パターンに分かれます。
副業規定の主なパターン
- 全面禁止:副業そのものを一律に禁止する。前述のとおり、合理的な理由がない全面禁止は無効となるリスクが高い
- 許可制:副業を行う前に会社の許可を得ることを義務づける。会社側の管理はしやすいが、運用や審査の手間がかかる
- 届出制:副業を行う場合に、事前または事後に会社へ届け出ることを義務づける。従業員の自由度が高く、近年採用する企業が増えている
厚生労働省のモデル就業規則も、届出制に近い考え方(会社への届出を前提に、一定の場合のみ禁止・制限できる)を示しています。中小企業においても、まずは「届出制」を軸に検討し、業種や職種の特性に応じて許可制の要素を加えるという進め方が現実的です。
4. 副業規定に盛り込んでおきたい項目
副業に関する規定を新たに設ける、または見直す際は、次の項目を整理しておくとトラブルを防ぎやすくなります。
規定に盛り込みたい主な項目
- 副業を行う場合の手続き(届出制か許可制か、様式、提出先)
- 会社が把握しておきたい情報(副業先の業務内容、勤務日数・時間の見込みなど)
- 禁止・制限できる場合の具体的な要件(労務提供への支障、秘密漏えい、競業、信用毀損)
- 労働時間の通算管理に関する取り扱い
- 規定に違反した場合の対応(指導、懲戒処分の可能性)
副業を「認める・認めない」という結論だけでなく、認める場合の手続きや、制限できる場合の基準まで明文化しておくことが、後々のトラブル予防につながります。
5. 労働時間の通算管理で注意したいポイント
副業を認める場合、特に注意したいのが労働時間の通算管理です。労働基準法上、複数の事業場で働く場合の労働時間は、原則として通算して管理する必要があります。
- 自社の所定労働時間と、副業先での労働時間を通算した上で、時間外労働の割増賃金や上限規制を確認する必要がある
- 従業員からの自己申告をもとに、副業先の労働時間を把握できる仕組みを整えておくことが重要
- 厚生労働省は、通算管理の負担を軽減する簡便な方法(管理モデル)も示している
「副業を認めたら、あとは従業員任せ」にしてしまうと、長時間労働や健康被害につながるリスクを見落としやすくなります。届出の際に、副業先での勤務日数・時間の見込みを申告してもらう仕組みを、規定とあわせて整えておくと安心です。
6. 副業・兼業をめぐる今後の法改正の動き
副業・兼業に関するルールは、今後さらに見直しが検討されています。政府の働き方改革の方針では、将来的に希望する人が副業・兼業を行いやすい社会を目指す方向性が示されており、労働時間の通算ルールの見直しなどが議論されています。
2026年7月時点では、関連する法改正はまだ国会審議前の検討段階です。実際の施行時期や内容は、今後の法案提出・国会審議の結果によって変わる可能性があります。最新の情報は、厚生労働省の公表資料でご確認ください。
制度が固まってから慌てて対応するよりも、現時点で自社の副業規定を一度整理しておくことで、今後の法改正にもスムーズに対応しやすくなります。
7. 規定を整備せず放置した場合のリスク
「うちは副業をしている人がいないから」と、就業規則に副業に関する規定を置いていない企業も少なくありません。しかし、規定がないまま放置すると、次のようなリスクが生じます。
規定がない場合に起こりやすい問題
- 従業員が副業を始めても、会社が把握できない
- 過重労働や健康被害が起きても、事前に防ぐ手立てがない
- トラブルが起きたときに、就業規則を根拠にした対応ができない
- 従業員によって対応がばらつき、不公平感につながる
副業を「認める・認めない」の結論を出す前段階として、まずは規定そのものの有無を確認し、必要に応じて整備しておくことが大切です。
8. 高知県の中小企業が副業規定を整備するときに整理したいこと
高知県宿毛市・四万十市・土佐清水市・黒潮町・大月町・三原村などの幡多地域では、家族経営や少人数の事業所様も多く、「副業の相談を受けたことがきっかけで、初めて就業規則を見直した」というケースも珍しくありません。
副業規定を整備する際は、まず自社の就業規則に副業に関する定めがあるかどうかを確認し、次に自社の実態(従業員数、業種、副業を希望する従業員の有無)に合わせて、全面禁止・許可制・届出制のどれを基本方針とするかを検討することから始めるとスムーズです。
就業規則全体の見直しとあわせて副業規定を整備したい方は、就業規則の作成・見直しサポートページもあわせてご覧ください。
9. よくある質問
Q. 就業規則に副業禁止の記載がない場合、従業員は副業をしてもよいのですか?
就業規則に副業に関する規定がない場合でも、就業時間外の副業は原則として従業員の自由です。ただし、規定がないと会社として個別の事情に応じた対応がしにくくなるため、トラブルを防ぐ観点からも規定を明文化しておくことをおすすめします。
Q. 副業を全面的に禁止する就業規則は有効ですか?
副業を一律に全面禁止する規定は、合理的な理由がない限り無効と判断されるおそれがあります。労務提供への支障や秘密漏えいのおそれなど、具体的な理由がある場合に限り制限する規定とするのが現実的です。
Q. 副業の許可制と届出制はどちらを選べばよいですか?
会社側の管理を重視するなら許可制、従業員の自由度や運用のしやすさを重視するなら届出制が選ばれる傾向にあります。厚生労働省のモデル就業規則も届出制に近い考え方を示しており、届出制を採用する企業が増えています。
Q. 副業の労働時間はどのように管理すればよいですか?
労働基準法上、本業と副業の労働時間は通算して管理する必要があります。時間外労働の割増賃金や上限規制に関わるため、従業員からの申告をもとに、副業先での労働時間も把握できる仕組みを整えておくことが大切です。
Q. 副業規定に違反した場合、懲戒処分はできますか?
就業規則に懲戒事由として明記し、実際に労務提供への支障や信用毀損などの実害が生じた場合には、懲戒処分の対象となり得ます。ただし、副業をしていたという事実だけで一律に処分することは難しく、個別の事情を確認した上での慎重な対応が必要です。
10. まとめ
就業規則で副業を一律に全面禁止することは難しく、合理的な理由がある場合に限り制限できるというのが基本的な考え方です。規定を整備する際は、全面禁止・許可制・届出制のどのパターンを基本方針とするかを決めた上で、手続き、制限できる場合の要件、労働時間の通算管理、違反時の対応まで具体的に定めておくことが、後々のトラブル予防につながります。
はしざき社会保険労務士・行政書士事務所では、副業規定の新設・見直しを含め、会社の実態に合った就業規則づくりをサポートしています。「うちの場合はどう整理すればよいか分からない」という段階でも、お気軽にご相談ください。
このコラムは2026年7月時点の制度・法改正の検討状況をもとに、一般的な考え方を整理したものです。個別の規定作成にあたっては、専門家にご相談ください。
参考情報
はしざき社会保険労務士・行政書士事務所
代表:橋崎 正(社会保険労務士 / 行政書士 / 1級FP技能士)
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