障害年金の初診日が分からないときは?証明の方法を社労士が解説
こんにちは、はしざき社会保険労務士・行政書士事務所の橋崎です。
障害年金の準備を進めていて、「最初にかかった病院がもう無い」「カルテが残っていないと言われた」という理由で、手が止まってしまう方は少なくありません。
初診日を証明する書類がそろわない場合でも、日本年金機構は「受診状況等証明書が添付できない申立書」と第三者証明・参考資料を組み合わせる方法を、20歳以降・20歳前の別に用意しています。証明が取れないことが分かった時点で、請求をあきらめる必要はありません。
ただし、用意する書類の組み合わせは、初診日が20歳前かどうかや、証明してくれる方が医療従事者かどうかで変わります。まずはご自身がどの場合にあたるのかを確認するところから始めましょう。
この記事の執筆者
はしざき社会保険労務士・行政書士事務所 代表
橋崎 正
(社会保険労務士 / 行政書士 / 1級FP技能士)
鳥取市出身。宿毛市在住。
こうち生活協同組合に30年以上勤務し、配送業務および共済・保険業務に従事。
累計2,500件を超える相談対応の経験を持つ。
社会保険労務士・行政書士・1級FP技能士の3つの資格を持つ。
障害年金や労務の手続き、相続・遺言の書類作成、その後のお金の見通しまで、
相談先を分けずに、ひとつの窓口で対応できることを強みとしている。
高知県全域からの相談に対応。
「困ったときに気軽に相談できる存在でありたい」を理念に、
制度の説明にとどまらず、生活・仕事・事業に関する不安を整理し、
実務に即した支援を行っている。
初診日として認められるかどうかは、提出された書類をもとに日本年金機構が個別に判断します。この記事は2026年8月20日に確認した一般的な情報です。個別の判断は、お近くの年金事務所へご確認ください。
この記事で分かること
- 障害年金でいう「初診日」の考え方と、証明書類が必要になる理由
- 初診日が分からないときに、どこへ何を確認すればよいかの手順
- 20歳以降・20歳前それぞれで用意できる、初診日の証明方法
1. 証明が取れなくても、別の方法が用意されている
障害年金では、保険料の納付状況などを確認するために初診日を特定する必要があり、初診日を明らかにする書類の提出が求められます。通常は、初診時の医療機関が作成した受診状況等証明書、または診断書がこれにあたります。
一方で、過去にさかのぼって請求する場合など、初診時の医療機関の証明を得ることが難しい場合があります。日本年金機構は、こうした場合に備えて、状況に応じた別の証明書類を用意できるようにしています。
初診時の医療機関の証明が得られない場合の主な選択肢
| ご自身の状況 | 用意する主な書類 | この記事の該当箇所 |
|---|---|---|
| 20歳以降に初診日がある | 受診状況等証明書が添付できない申立書+第三者証明(2通)+参考資料、または医療従事者による第三者証明(1通) | 第4章 |
| 20歳前に初診日がある | 2番目以降の医療機関の証明、第三者証明(2通)、医療従事者による第三者証明(1通)のいずれか | 第5章 |
| 上記のどれも難しい | 初診日が存在する期間を示す参考資料、または請求の5年以上前に作成されたカルテ等 | 第6章 |
20歳前に初診日があっても、その初診日が厚生年金の加入期間中であった場合は、障害厚生年金の対象となるため「20歳以降に初診日がある場合」の取り扱いになります。
どの方法を選ぶ場合でも、共通して必要になるのが「受診状況等証明書が添付できない申立書」(様式2)です。これは、初診時の医療機関の証明をなぜ用意できないのかを、ご自身で申し立てる書類です。まずはこの書類が必要になる、と考えておくと準備の見通しが立ちます。
2. 障害年金でいう「初診日」とは
日本年金機構の「障害年金ガイド」は、初診日を次のように説明しています。
初診日の定義
障害の原因となった病気やけがについて、初めて医師等の診療を受けた日をいいます。同一の病気やけがで転医があった場合は、一番初めに医師等の診療を受けた日が初診日となります。
ここで見落とされやすいのが、後半の「転医があった場合」です。現在通院している病院が初診日の医療機関になるとは限りません。同じ病気やけがでいくつもの病院を移っている場合、初診日は一番最初にかかった医療機関の受診日になります。
また、初診日の証明として受診状況等証明書が必要になるのは、初診時の医療機関と、診断書を作成した医療機関が異なる場合です。最初から現在まで同じ医療機関にかかっている場合は、診断書で初診日が確認できるため、受診状況等証明書を別に用意する必要はありません。ご自身がどちらにあたるかを、最初に確認してください。
3. 初診日を確認するときの3つの手順
「初診日が分からない」といっても、記憶が曖昧なだけの場合と、医療機関側に記録が残っていない場合とでは、次にすることが変わります。順番に確認していきます。
手順1:受診の経過を古い順に書き出す
いつごろ、どのような症状で、どこにかかったかを、思い出せる範囲で古い順に書き出します。正確な日付が分からなくても構いません。「高校生のころ」「引っ越す前」といった生活の出来事と結びつけると、時期を絞り込みやすくなります。ご家族が付き添っていた場合は、あわせて記憶を確認してみてください。
手順2:心当たりのある医療機関へ、古い順に問い合わせる
書き出した医療機関へ、当時の受診記録が残っているかを確認します。ここで知っておきたいのが、カルテの保存期間です。医師法第24条第2項は、診療録を5年間保存しなければならないと定めています。裏を返せば、5年を過ぎたカルテは廃棄されている可能性があり、そのこと自体は違法ではありません。初診から長い年月が経っている場合、証明が取れないのは珍しいことではありません。
問い合わせの際は、「カルテがあるか」だけでなく、受診の事実が分かる記録が他に残っていないかもあわせて尋ねてみてください。医療機関そのものが廃院している場合は、記録の引き継ぎ先があるかを確認します。
手順3:手元に残っている資料を集める
医療機関の証明が取れない場合、次の段階で使うのが、受診した事実の裏づけとなる参考資料です。日本年金機構は、申し立てた初診日について客観性が認められる資料として、次のようなものを挙げています。
初診日の参考資料として挙げられているもの
- 診察券
- 入院記録
- 医療機関や薬局の領収書
- 生命保険・損害保険・労災保険の給付申請時の診断書
- 障害者手帳の申請時の診断書
- 交通事故証明書
- インフォームド・コンセントによる医療情報サマリー
- 事業所等の健康診断の記録
- 健康保険の給付記録(レセプトを含む)
捨ててしまったと思っていても、保険の請求書類のなかに当時の診断書が残っていることがあります。自宅の書類だけで判断せず、加入している健康保険や生命保険の記録もあたってみてください。
4. 20歳以降に初診日がある場合の証明方法
初診日が20歳以降にある場合、初診時の医療機関の証明が得られないときは、次の2つの方法のいずれかで書類を用意します。どちらの方法でも、受診状況等証明書が添付できない申立書(様式2)は共通して必要です。
20歳以降に初診日がある場合の2つの方法
| 方法 | 用意する書類 |
|---|---|
| 第三者証明(2通)と参考資料 | 受診状況等証明書が添付できない申立書/初診日に関する第三者証明書(2名分)/申し立てた初診日に関する参考資料 |
| 医療従事者による第三者証明(1通) | 受診状況等証明書が添付できない申立書/初診日頃に受診した医療機関の担当医師・看護師等による第三者証明書(1名分) |
証明してくれる方が、初診日頃に受診した医療機関の医療従事者である場合は1通で足りますが、それ以外の方の場合は2通に加えて参考資料も必要になります。いずれの場合も、請求される方の三親等内の親族は第三者証明を行うことができません。ご家族に書いてもらえばよい、という書類ではない点に注意してください。
第三者証明の内容についても要件があります。日本年金機構は、次のいずれかに該当する内容であることを求めています。
第三者証明として認められる内容
- 初診日頃の受診状況を、直接見て認識していた場合に、その受診状況を申し立てるもの
- 請求される方やご家族などから、初診日頃に、その受診状況を聞いていた場合に、聞いていた内容を申し立てるもの
- 請求される方やご家族などから、請求時からおおむね5年以上前に、初診日頃の受診状況を聞いていた場合に、聞いていた内容を申し立てるもの
つまり、最近になって事情を聞いた方が、その場で書けるものではありません。当時の状況を知っている方に心当たりがあるかどうかが、この方法を選べるかの分かれ目になります。
5. 20歳前に初診日がある場合の証明方法
初診日が20歳前にある場合は、20歳以降とは異なる方法が3つ用意されています。20歳前に初診日がある場合の障害基礎年金には保険料の納付要件がないため、確認の方法にも幅が設けられています。
20歳前に初診日がある場合の3つの方法
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 2番目以降の医療機関の証明 | 2番目以降に受診した医療機関が作成した受診状況等証明書または診断書を用意する。その受診日から障害認定日が20歳到達日以前であることが確認でき、かつ受診日前に厚生年金の加入期間がない場合に、申し立てた初診日が認められる |
| 第三者証明(2通) | 受診状況等証明書が添付できない申立書と、第三者証明書2名分を用意する。20歳以降の場合と異なり、参考資料は求められていない |
| 医療従事者による第三者証明(1通) | 初診日頃または20歳前の時期に受診した医療機関の担当医師・看護師等による第三者証明書1名分を、申立書とあわせて用意する |
1つ目の方法は、たとえば10歳のときにA病院で初診があり、17歳でB病院を受診している場合に、B病院の証明があればA病院の証明は不要になる、という考え方です(B病院の受診前に厚生年金の加入期間がない場合)。子どものころの受診をすべてさかのぼる必要はない、という点で負担が大きく変わります。
また、請求している傷病に関して18歳6か月前に障害者手帳の交付を受けており、その交付日前に厚生年金の加入期間がない場合は、申立書と障害者手帳を用意することで申し立てた初診日が認められる取り扱いもあります。
6. どの方法も難しい場合と、相談の目安
ここまでの方法での対応が難しい場合でも、その他の証明方法が示されています。ひとつは、初診日そのものではなく、初診日が存在する一定の期間を証明する方法です。期間の始まりを示す資料(就職時に提出した診断書、人間ドックの結果など)と、期間の終わりを示す資料(2番目以降に受診した医療機関による証明、交付日の記載された障害者手帳など)を用意し、その期間中の年金制度への加入状況と保険料納付要件が一定の条件を満たす場合に、申し立てた初診日が認められます。
もうひとつは、請求の5年以上前に医療機関が作成したカルテ等に、他の医療機関での初診日が記載されている場合です。転院時の記録に前医の情報が残っていることがあり、これが手がかりになります。
ただし、ここまでご紹介した方法は、いずれも「この書類をそろえれば必ず認められる」というものではありません。提出された書類をもとに、初診日として認められるかどうかが個別に判断されます。次のような場合は、書類をそろえる前の段階でご相談ください。
自分だけで判断せず、相談したほうがよい場面
- 初診にあたる医療機関が複数考えられ、どこが最初か決められない
- 同じ病気の症状が出た時期と、実際に受診した時期が離れている
- 健康診断で異常を指摘されてから受診するまでに間がある
- 初診日が20歳前後、または就職・退職の前後にあたり、加入していた年金制度が変わる時期と重なる
- 第三者証明を頼める方に心当たりがなく、参考資料も見つからない
初診日がいつになるかで、請求できる年金の種類や保険料の納付要件の判定が変わります。判断に迷う場合は、幡多地域(四万十市・宿毛市・土佐清水市・黒潮町・大月町・三原村)にお住まいの方であれば幡多年金事務所が管轄となりますので、そちらへご相談いただくこともできます。当事務所でも、これまでの受診の経過を一緒に整理するところから障害年金の申請サポートを行っています。あわせて、不支給になりやすい理由を整理した「障害年金がもらえない人にはどんな特徴がある?」もご覧ください。
7. よくある質問
Q. 初診日を証明できないと、障害年金は請求できないのですか?
初診時の医療機関の証明が得られない場合でも、別の証明書類を用意する方法が示されています。日本年金機構は、20歳以降・20歳前それぞれについて、第三者証明や参考資料を組み合わせる方法を案内しています。ただし、書類をそろえれば必ず認められるわけではなく、提出された書類をもとに個別に判断されます。
Q. 受診状況等証明書は必ず必要ですか?
初診時の医療機関と診断書を作成した医療機関が同じ場合は、必要ありません。診断書で初診日が確認できるためです。最初にかかった医療機関から現在まで転医している場合に、初診日の確認のために必要になります。
Q. 第三者証明は、家族に書いてもらってもよいのですか?
請求される方の三親等内の親族は、第三者証明を行うことができません。三親等内には、親、子、祖父母、孫、兄弟姉妹、おじ・おば、おい・めいなどが含まれます。当時の受診状況を知っている、親族以外の方に依頼することになります。
Q. カルテが残っていない場合、何を探せばよいですか?
診察券、入院記録、医療機関や薬局の領収書、生命保険・損害保険・労災保険の給付申請時の診断書、障害者手帳の申請時の診断書、交通事故証明書、事業所等の健康診断の記録、健康保険の給付記録(レセプトを含む)などが参考資料として挙げられています。自宅の書類だけで判断せず、加入している健康保険や保険会社の記録もあたってみてください。
Q. 初診日は自分で決めて申し立ててもよいのですか?
初診日は、障害の原因となった病気やけがについて初めて医師等の診療を受けた日であり、ご自身の希望で選べるものではありません。同じ病気やけがで転医している場合は、一番初めに診療を受けた日が初診日になります。どこが初診にあたるか判断に迷う場合は、書類をそろえる前に年金事務所へご確認ください。当事務所でも、受診の経過を整理するところからご相談を承っています。
8. まとめ:初診日は「思い出す」より「たどる」
初診日が分からないという状態は、記憶が曖昧な場合と、医療機関に記録が残っていない場合とに分かれます。どちらであっても、記憶だけを頼りに決めるのではなく、資料をたどって確認していく作業になります。
初診日を確認するときの4つのステップ
- 受診の経過を古い順に書き出し、初診にあたりそうな医療機関を絞り込む
- 心当たりのある医療機関へ、古い順に記録の有無を問い合わせる
- 証明が得られない場合は、受診状況等証明書が添付できない申立書を前提に、第三者証明と参考資料の見通しを立てる
- 初診日が20歳前かどうか、加入していた年金制度が変わる時期と重なっていないかを確認する
当事務所は、社会保険労務士・行政書士・1級FP技能士として、幡多地域を中心にご相談を承っています。何から手をつければよいか分からない段階でも構いません。これまでの受診の経過を一つずつ整理するところから、丁寧にお話を伺います。
はしざき社会保険労務士・行政書士事務所
代表:橋崎 正(社会保険労務士 / 行政書士 / 1級FP技能士)
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