過半数代表者の選び方|36協定・就業規則で無効にしないための手順を社労士が解説

過半数代表者の選び方を、目的の周知、立候補・推薦、投票・挙手・回覧、記録の4ステップで示した図

※更新日:2026年9月15日 | 読了目安:約8分

こんにちは、はしざき社会保険労務士・行政書士事務所の橋崎です。
就業規則を変えるとき、36協定を結ぶとき、「従業員の代表」を決める必要があります。
毎年おなじ人にお願いしているけれど、この決め方で本当にいいのだろうか。

結論からお伝えすると、過半数代表者は会社が指名して決めることができません。
何のための代表かを伝えたうえで、従業員が自分たちで選ぶ必要があります。

まずは、いま代表になっている方がどうやって決まったかを、思い出すところから始めてください。

この記事では、過半数代表者になれる人の条件、会社が指名しない選び方の手順、そして選び方を間違えたときに何が無効になるのかを、順番に見ていきます。

この記事の執筆者

はしざき社会保険労務士・行政書士事務所 代表
(社会保険労務士 / 行政書士 / 1級FP技能士)

はしざき社会保険労務士・行政書士事務所 代表 橋崎 正

鳥取市出身。宿毛市在住。 こうち生活協同組合に30年以上勤務し、配送業務および共済・保険業務に従事。 累計2,500件を超える相談対応の経験を持つ。

社会保険労務士・行政書士・1級FP技能士の3つの資格を持つ。 障害年金や労務の手続き、相続・遺言の書類作成、その後のお金の見通しまで、 相談先を分けずに、ひとつの窓口で対応できることを強みとしている。

高知県全域からの相談に対応。 「困ったときに気軽に相談できる存在でありたい」を理念に、 制度の説明にとどまらず、生活・仕事・事業に関する不安を整理し、 実務に即した支援を行っている。

この記事の要点

  • 過半数代表者は、会社が指名して決めることができません。従業員が自分たちで選びます。
  • 条件は2つ。管理監督者でないことと、何のための代表かを伝えたうえで投票・挙手などで選ばれていることです。
  • 選び方を間違えると、36協定が無効になり、残業をさせる根拠が無くなります。
  • そして、いちばん抜けやすいのは選んだ記録を残すこと。適正に選んだかどうかは、後から記録でしか示せません。

1. 過半数代表者とは、誰のことか

過半数代表者とは、その事業場で働く労働者の過半数を代表する人のことです。

就業規則を作ったり変えたりするとき、会社は労働者の意見を聴かなければならないと労働基準法第90条で決まっています。

その意見を述べる相手が、過半数代表者です。

36協定(時間外労働・休日労働に関する協定)を結ぶときも、会社が協定を結ぶ相手はこの代表者になります。

残業をさせるための手続きと、就業規則の手続きは、同じ代表者が担います。

労働組合がある会社は、組合が相手になる

労働者の過半数で組織する労働組合がある場合は、その労働組合が会社の相手方になります。

過半数代表者を選ぶ必要があるのは、そうした労働組合が無い会社です。

高知県の中小企業では労働組合が無い会社が多く、毎年この場面が回ってきます。

2. 過半数代表者になれる人の2つの条件

条件は2つだけです。

どちらか一方でも欠けていると、その人は過半数代表者として認められません。

根拠は労働基準法施行規則第6条の2で、2026年4月1日施行の内容です。

条件1 管理監督者でないこと

労働基準法第41条第2号にいう「監督又は管理の地位にある者」は、過半数代表者になれません。

ここでいう管理監督者は、役職名ではなく、勤務時間の裁量や待遇といった実態で判断されます。

「部長」「工場長」という肩書きがあっても、実態が伴わなければ管理監督者にはあたりません。

なお、事業場に管理監督者しかいない場合は、条件2を満たす人を代表者とする扱いが定められています。

条件2 目的を伝えたうえで、民主的な手続きで選ばれていること

条文は、協定等をする者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であること、と定めています。

ここには2つの要素が入っています。

ひとつは、何のために代表を選ぶのかを、あらかじめ全員に伝えることです。

もうひとつは、投票や挙手など、全員が意思を示せる方法で選ぶことです。

そして条文は、使用者の意向に基づき選出されたものでないこと、と続きます。

会社が「今年はあなたにお願いします」と決めた場合は、ここに当たります。

要するに、会社が選ぶのではなく、従業員が自分たちで選ぶ形になっているかが問われています。

3. 会社が指名しない選び方(4ステップ)

実際の進め方は、次の4つに分けられます。

従業員が数人の会社でも、大がかりな選挙を開く必要はありません。

ステップ1 何のための代表かを伝える

「就業規則の変更について意見を聴くため」「36協定を結ぶため」と、目的をはっきり伝えます。

朝礼、掲示、社内メールなど、全員に届く方法であれば形式は問いません。

ステップ2 立候補・推薦を募る

誰が代表になるかは、従業員の側から出してもらいます。

会社が候補者を1人に絞って示すと、条件2の「使用者の意向」に当たるおそれがあります。

ステップ3 投票・挙手・回覧などで決める

全員が賛否を示せる方法であれば、投票でも挙手でも、書面の回覧でもかまいません。

大切なのは、過半数の労働者が賛成したと分かる形にしておくことです。

「反対の方はいませんか」と問いかけて沈黙を確かめるだけでは、誰が賛成したのかが残りません。

ステップ4 選んだ記録を残す

選出した日付、方法、参加した人数、結果を書き留めておきます。

記録が無いと、適正に選んだことを後から示せません。

労働基準監督署の調査で説明を求められるのは、この部分です。

「過半数」は誰を分母に数えるか

分母は、その事業場で働く労働者の全員です。

パート、アルバイト、契約社員も数に入ります。

正社員だけで過半数を数えると、母数が足りずに選び直しになることがあります。

休職中の方や出向している方をどう数えるかは、状況によって判断が変わります。迷ったときは所轄の労働基準監督署へご確認ください。

4. よくある思い込みチェック

会社側からよくうかがう受け止め方を、条文と突き合わせて並べました。

ひとつでも心当たりがあれば、選び方を見直す場面かもしれません。

  • 社長が「今年はあなた」と指名すればよい

    使用者の意向に基づいて選ばれた人は、要件を満たしません

  • 管理職に任せておけば確実

    監督又は管理の地位にある者は、過半数代表者になれません

  • 親睦会の幹事が、そのまま代表になる

    何のための選出かを明らかにした投票・挙手等の手続きが必要です

  • パートやアルバイトは頭数に入れない

    分母は事業場の労働者全員です。パートもアルバイトも数に入ります

  • 去年の代表が、そのまま今年も代表

    法令に任期の定めはありません。ただし目的を明らかにして選ぶことが求められるため、自動的に引き継ぐ形は避けたほうが安全です

5. 選び方を間違えると、何が無効になるか

選出の手続きに不備があると、その代表者と結んだ協定が無効と判断されることがあります。

とくに影響が大きいのは36協定です。

36協定が無効になれば、時間外労働をさせる根拠が無くなります。

つまり、これまでどおり残業させていた状態が、そのまま労働基準法違反になりかねません。

就業規則についても、意見を聴いた相手が過半数代表者にあたらなければ、労働基準法第90条の手続きを踏んでいないことになります。

社内の稟議にたとえると、決裁を通す人を間違えたまま進めてしまった状態に近いものです。

書類そのものが整っていても、通した順番が違えばやり直しになります。

引き受け手がいない、断られたときは

代表になることを断られる場面もあります。

その場合でも、会社が一方的に指名して進めることはできません。

役割と負担を説明したうえで、もう一度募るのが基本になります。

会社側には、代表者が協定等に関する事務を円滑に進められるよう配慮する義務も定められています。

代表者への不利益な取扱いは禁止されている

代表者であること、なろうとしたこと、代表者として正当な行為をしたことを理由に、不利益な取扱いをすることは禁じられています。

代表者として反対意見を述べたことを理由に、評価や配置で不利に扱わないことが求められます。

選出の手続きそのものは、専門家に頼まなくても社内で進められます。

手順を決めて記録を残すところまでは、総務のご担当者で十分に対応できます。

就業規則の中身そのものに不安がある場合は、就業規則の作成・見直しのページに当事務所が対応できる範囲をまとめていますので、あわせてご覧ください。

6. よくある質問

Q. 従業員が10人未満の会社でも、過半数代表者を選ぶ必要はありますか

36協定を結ぶのであれば必要です。就業規則の作成と届出の義務は常時10人以上の事業場にかかりますが、36協定は従業員の人数に関係なく、時間外労働をさせるために必要になります。

Q. 過半数代表者に任期はありますか

労働基準法と労働基準法施行規則に、任期を定めた規定はありません。ただし、何のための代表かを明らかにして選ぶことが求められるため、前年の代表者を自動的に続投させる形は避けたほうが安全です。

Q. 事業場が複数あるときは、事業場ごとに選ぶ必要がありますか

原則として事業場ごとに選びます。労働基準法は事業場を単位として適用され、就業規則の届出も事業場ごとに行うためです。本社でまとめて1人を選んで済ませられるわけではない点に注意してください。

Q. 投票や挙手ではなく、書面の回覧やメールで選んでもよいですか

条文は「投票、挙手等の方法」と定めており、方法を投票と挙手に限っていません。全員に目的が伝わり、一人ひとりが賛否を示せる形であれば、回覧や電子的な方法も考えられます。自社のやり方で足りるか迷う場合は、所轄の労働基準監督署へご確認ください。

Q. パートやアルバイトも「過半数」に数えますか

数えます。分母になるのは、その事業場で働く労働者の全員です。正社員だけで過半数を判断すると、選出がやり直しになることがあります。

7. まとめ:手続きよりも、記録が残るかどうか

過半数代表者の選び方は、複雑な制度ではありません。

会社が決めないこと、目的を伝えること、全員が意思を示せること。この3つが揃っていれば足ります。

今年の代表者を決める4つのステップ

  1. 何のための代表かを、全員に伝える
  2. 立候補・推薦を、従業員の側から募る
  3. 投票・挙手・回覧などで、過半数の賛成を確かめる
  4. 日付・方法・人数・結果を記録に残す

ここまでが、法令が求めている手順です。そのうえで、事業場の人数や働き方によって判断が分かれる場面もあります。

いちばん抜けやすいのは4つ目です。

適正に選んだかどうかは、後から記録でしか示せません。

当事務所では、就業規則の作成と見直し、36協定をはじめとする労使協定の手続き、労務相談をお引き受けしています。

選び方に迷う場面や、これまでのやり方を確かめておきたい場面がありましたら、お気軽にお声がけください。

この記事の内容でお困りのことがあれば、お気軽にご相談ください。初回のご相談は60分・無料です。

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