就業規則の変更手続き|意見書・届出・周知の順番を社労士が解説

就業規則の変更手続き|意見書・届出・周知の順番

こんにちは、はしざき社会保険労務士・行政書士事務所の橋崎です。
就業規則を変えることになったとき、「意見書は誰に書いてもらうのか」「労働基準監督署へ届け出れば終わりなのか」と迷われる事業主の方は少なくありません。

就業規則の変更は、①変更内容を決める → ②過半数代表者などから意見を聴く → ③意見書を添えて所轄の労働基準監督署へ届け出る → ④変更後の内容を従業員へ周知する、という順で進めます。

このうち見落とされやすいのが④の周知です。届出を済ませていても、従業員へ周知していなければ、変更後の内容が労働条件として認められない場合があります。まずは、その変更が従業員にとって不利益になるかどうかを分けて考えるところから始めましょう。

この記事の執筆者

はしざき社会保険労務士・行政書士事務所 代表
(社会保険労務士 / 行政書士 / 1級FP技能士)

はしざき社会保険労務士・行政書士事務所 代表 橋崎 正

鳥取市出身。宿毛市在住。 こうち生活協同組合に30年以上勤務し、配送業務および共済・保険業務に従事。 累計2,500件を超える相談対応の経験を持つ。

社会保険労務士・行政書士・1級FP技能士の3つの資格を持つ。 障害年金や労務の手続き、相続・遺言の書類作成、その後のお金の見通しまで、 相談先を分けずに、ひとつの窓口で対応できることを強みとしている。

高知県全域からの相談に対応。 「困ったときに気軽に相談できる存在でありたい」を理念に、 制度の説明にとどまらず、生活・仕事・事業に関する不安を整理し、 実務に即した支援を行っている。

必要な手続きは、事業場の規模、労働組合の有無、変更する内容によって変わります。この記事は2026年8月19日に確認した一般的な情報です。個別の判断は、所轄の労働基準監督署へご確認ください。

この記事で分かること

  • 就業規則を変更するときの4つのステップと、その順番
  • 意見書は「同意書」ではないこと、過半数代表者の選び方
  • 届出だけでは足りず、周知が効力に関わる理由

1. 就業規則の変更は4つのステップで進める

就業規則を変更するときは、新しく作るときと同じ手続きを踏みます。労働基準法第89条は、常時10人以上の労働者を使用する使用者に就業規則の作成と行政官庁への届出を義務づけたうえで、これを変更した場合も同様に届け出るものと定めています。

就業規則を変更するときの4つのステップ

ステップ やること 根拠となる主な規定
1. 決める 変更する内容を決め、従業員にとって不利益な変更にあたらないかを確認する 労働契約法第9条・第10条
2. 意見を聴く 過半数労働組合、または過半数代表者から意見を聴き、意見書にまとめる 労働基準法第90条第1項
3. 届け出る 意見書を添えて、所轄の労働基準監督署長へ届け出る 労働基準法第89条・第90条第2項
4. 周知する 変更後の就業規則を、従業員がいつでも確認できる状態にする 労働基準法第106条第1項/労働契約法第7条・第10条

この順番は入れ替えられません。届出には意見書の添付が必要とされているため、意見を聴かないまま先に届け出ることはできないからです。

また、4つのステップは目的が二つに分かれています。ステップ2と3は、労働基準法上の手続きを果たすためのものです。これに対してステップ4の周知は、変更後の内容を労働条件として機能させるために欠かせないものです。届出と周知は別のものだと押さえておくと、進め方を間違えにくくなります。

2. 変更内容を決め、不利益変更にあたるかを確認する

最初に決めるのは、手続きではなく「なぜ変えるのか」です。法改正への対応、実際の働き方と規則のずれ、新しい制度の導入など、変更の目的がはっきりしていないと、条文だけを直しても現場で運用できません。

変更内容が固まったら、その内容が従業員にとって不利益な変更にあたるかを確認します。ここで扱いが大きく変わるためです。

労働契約法第9条は、使用者は労働者と合意することなく、就業規則を変更することによって労働者の不利益に労働条件を変更することはできない、と定めています。ただし例外があり、同法第10条は、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ変更が合理的なものであるときは、労働条件は変更後の就業規則によるものとしています。

合理性が判断されるときに考慮される事情(労働契約法第10条)

考慮される事情 確認しておきたいこと
労働者の受ける不利益の程度 賃金や手当が減るのか、どのくらい減るのか、対象になるのは誰か
労働条件の変更の必要性 なぜ今変える必要があるのか、他の方法では対応できないのか
変更後の就業規則の内容の相当性 経過措置や代償措置があるか、内容が行き過ぎていないか
労働組合等との交渉の状況 説明の場を設けたか、意見を聴いたうえで内容を見直したか

このほかにも「その他の就業規則の変更に係る事情」が考慮されます。つまり、手続きを踏んだかどうかだけで決まるものではありません。

不利益変更にあたるかどうか、合理的といえるかどうかは、最終的には個別の事情に照らして判断されるものです。この記事で個別の変更が有効かどうかを判断することはできません。賃金・手当・退職金・労働時間に関わる変更を検討している場合は、内容を決める前の段階でご相談ください。

なお、副業・兼業のように、規定の作り方そのものに検討が必要なテーマもあります。副業に関する規定の考え方は就業規則で副業は禁止できる?届出制・許可制の作り方で解説しています。

3. 過半数代表者から意見を聴き、意見書にまとめる

労働基準法第90条第1項は、就業規則の作成または変更について、その事業場に労働者の過半数で組織する労働組合があればその労働組合、ない場合は労働者の過半数を代表する者の意見を聴かなければならないと定めています。

過半数代表者には選び方の要件がある

過半数代表者は、誰でもよいわけではありません。労働基準法施行規則第6条の2は、就業規則について意見を聴かれる者を含め、過半数代表者について次の2つを求めています。

過半数代表者の要件(労働基準法施行規則第6条の2)

  1. 労働基準法第41条第2号に規定する監督または管理の地位にある者でないこと
  2. その者を選出することを明らかにして実施される投票、挙手等の方法による手続により選出された者であって、使用者の意向に基づき選出されたものでないこと

社長が「この人にお願いします」と指名した場合や、管理監督者にあたる立場の方を代表にした場合は、この要件を満たさないおそれがあります。何のために代表を選ぶのかを従業員へ示したうえで、投票や挙手など、過半数の支持が分かる方法で選んでください。

「意見を聴く」であって「同意を得る」ではない

意見書は同意書ではありません。厚生労働省も、届出にあたって過半数代表の氏名を記載した意見書を添える必要はあるが同意は不要であるとし、そのうえで出された意見は労使関係のためにも考慮することが望ましいとしています。

したがって、意見書に反対の内容が書かれていても、それだけで届出ができなくなるわけではありません。一方で、反対意見が出たまま押し通した事実は残ります。特に不利益変更を伴う場合、前章のとおり交渉の状況が考慮されるため、出された意見を踏まえて内容を見直せないかを検討することに意味があります。

4. 意見書を添えて労働基準監督署へ届け出る

変更した就業規則は、意見書を添えて所轄の労働基準監督署長へ届け出ます。高知労働局は、常時10人以上の労働者を使用する事業場について、作成または変更した場合には遅滞なく、過半数労働組合または労働者の過半数を代表する者の意見書を添えて、所轄労働基準監督署長へ1部(控えが必要なときは2部)届け出る必要があると案内しています。

「何日以内」という日数ではなく「遅滞なく」とされている点に注意してください。変更の効力を先に発生させておきながら届出だけ何か月も先送りにする、という進め方は想定されていません。

届出は窓口へ持参するほかに、電子申請でも行えます。厚生労働省は、e-Govに加えて労働条件ポータルサイト「確かめよう労働条件」からの電子申請にも対応しています。

事業場が複数ある場合の本社一括届出

支店や営業所が複数ある会社では、事業場ごとに届け出るのが原則ですが、要件を満たせば本社でまとめて届け出ることもできます。厚生労働省の通達(令和7年3月28日基発0328第9号)は、本社の就業規則と各事業場の就業規則の内容が同一であることを前提としたうえで、意見書については事業場ごとに作成したものを添付することとしています。

本社一括届出を使う場合でも、意見を聴く手続きは事業場ごとに必要です。「本社でまとめて届け出るから、意見聴取も本社だけでよい」とはなりません。

5. 変更後の就業規則を従業員へ周知する

届出を終えたら、変更後の就業規則を従業員へ周知します。労働基準法第106条第1項が使用者に周知を義務づけており、厚生労働省は次の3つの方法を示しています。

就業規則の周知の方法

方法 内容
配付する 労働者の一人ひとりへ配る
掲示・備え付ける 職場の見やすい場所へ掲示する、または備え付ける
電子媒体で確認できるようにする 電子媒体に記録し、常時モニター画面等で確認できるようにする

周知を後回しにしてはいけない理由は、行政手続きだけの問題ではないからです。労働契約法第7条は、合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合には、労働契約の内容はその就業規則で定める労働条件によるものとする、と定めています。変更の場面でも同じで、同法第10条は、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ変更が合理的であるときに、労働条件は変更後の就業規則によるとしています。

言い換えると、届出は労働基準法上の手続き、周知は変更後の内容が労働条件として通用するかどうかに関わるものです。金庫にしまったままの就業規則では、変更した内容を根拠に説明することが難しくなります。

はしざき事務所では、社会保険労務士として、就業規則の作成と見直しのご相談を承っています。どこから手をつければよいか分からない段階でも、今の働き方と規則のずれを一つずつ整理するところからお手伝いします。承っている内容と料金の目安は就業規則の作成・見直しのサポート内容にまとめています。就業規則をしばらく見直していない場合は、変更手続きに入る前に就業規則の見直しポイントと放置リスクもあわせてご確認ください。

6. よくある質問

Q. 従業員代表が反対の意見を書いた場合、就業規則を変更できませんか。

反対意見が書かれていても、それだけで変更や届出ができなくなるわけではありません。労働基準法が求めているのは意見を聴くことであり、厚生労働省も同意は不要としています。ただし、出された意見は労使関係のためにも考慮することが望ましいとされています。特に従業員に不利益な変更の場合、交渉の状況が合理性の判断で考慮されるため、意見を踏まえて内容を見直せないかを検討してください。

Q. 就業規則を変更したら、いつまでに届け出る必要がありますか。

「何日以内」という日数ではなく、遅滞なく届け出るものとされています。高知労働局は、常時10人以上の労働者を使用する事業場について、作成または変更した場合には遅滞なく、意見書を添えて所轄労働基準監督署長へ届け出る必要があると案内しています。届出は窓口への持参のほか、e-Govや労働条件ポータルサイトからの電子申請でも行えます。

Q. 従業員が10人未満の会社でも、変更のときに手続きは必要ですか。

労働基準法第89条の届出義務は、常時10人以上の労働者を使用する事業場が対象です。10人未満の事業場は、この義務の対象ではありません。ただし、任意に作成した就業規則であっても、その内容を労働条件として機能させるには周知が関わります。労働契約法第7条は、合理的な労働条件が定められている就業規則を労働者に周知させていた場合に、労働契約の内容がその就業規則によるとしています。変更したまま従業員へ伝えていない状態は避けてください。

Q. 支店が複数ある場合、本社でまとめて届け出できますか。

要件を満たせば可能です。厚生労働省の通達(令和7年3月28日基発0328第9号)は、本社の就業規則と各事業場の就業規則の内容が同一であることを前提に、本社一括届出の取扱いを示しています。ただし意見書は事業場ごとに作成したものを添付することとされています。意見を聴く手続き自体は事業場ごとに必要です。

Q. 従業員へ知らせていない変更後の就業規則は有効ですか。

周知していない場合、変更後の内容が労働条件として認められない可能性があります。労働契約法第10条は、変更後の就業規則を労働者に周知させ、かつ変更が合理的なものであるときに、労働条件は変更後の就業規則によるものとしています。届出を済ませたかどうかとは別に、配付、掲示・備え付け、電子媒体での確認のいずれかの方法で、従業員がいつでも内容を確認できる状態にしてください。

7. まとめ:就業規則の変更は「届出で終わり」ではない

就業規則の変更は、次の順で進めると整理しやすくなります。

就業規則を変更するときの5つの確認

  1. 何のために変えるのかを決める
  2. 従業員にとって不利益な変更にあたらないかを確認する
  3. 過半数代表者を要件に沿って選び、意見を聴く
  4. 意見書を添えて、所轄の労働基準監督署長へ遅滞なく届け出る
  5. 変更後の就業規則を従業員へ周知し、いつでも確認できる状態にする

この5つのうち、後から問題になりやすいのは2番目と5番目です。手続きの形だけを整えても、内容が従業員にとって不利益で、しかも周知していなければ、変更後の内容を根拠に説明することが難しくなります。逆に言えば、変更の目的を整理し、意見を聴き、きちんと伝えるという当たり前の順序を踏むことが、いちばん確実な進め方です。

はしざき社会保険労務士・行政書士事務所
代表:橋崎 正(社会保険労務士 / 行政書士 / 1級FP技能士)
お問い合わせ電話:090-4977-0845

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