遺族年金の手続き|家族が亡くなったら何をいつまでに、どこへ
※更新日:2026年9月18日 | 読了目安:約11分
年金を受け取っていた父が亡くなり、役所への死亡届は済ませた。
残された母から「年金はどうなるの」と聞かれて、代わりに調べ始めたところではないでしょうか。
結論からお伝えすると、年金の手続きは3つです。
年金の死亡届 → 未支給年金の請求 → 遺族年金の請求の順に進めれば、抜けは出ません。
まずは、亡くなった方が厚生年金と国民年金のどちらを受けていたかを、年金証書か振込通知書で確かめてください。
この記事では、3つの手続きを「誰が・何を・いつまでに・どこへ」の順で見ていきます。
この記事の執筆者
はしざき社会保険労務士・行政書士事務所 代表
橋崎 正
(社会保険労務士 / 行政書士 / 1級FP技能士)
鳥取市出身。宿毛市在住。
こうち生活協同組合に30年以上勤務し、配送業務および共済・保険業務に従事。
累計2,500件を超える相談対応の経験を持つ。
社会保険労務士・行政書士・1級FP技能士の3つの資格を持つ。
障害年金や労務の手続き、相続・遺言の書類作成、その後のお金の見通しまで、
相談先を分けずに、ひとつの窓口で対応できることを強みとしている。
高知県全域からの相談に対応。
「困ったときに気軽に相談できる存在でありたい」を理念に、
制度の説明にとどまらず、生活・仕事・事業に関する不安を整理し、
実務に即した支援を行っている。
この記事の要点
- 年金の手続きは死亡届・未支給年金・遺族年金の3つです。役所の死亡届だけでは、遺族年金は受け取れません。
- 期限があるのは死亡届だけで、厚生年金は10日以内、国民年金は14日以内です。マイナンバーが登録されていれば、原則として出さなくてよい届です。
- 遺族年金は請求して初めて受け取れます。亡くなった方が70歳を過ぎていても、母に自分の年金があっても、対象になる場合があります。
- では、母は本当に受け取れる人なのか。手順3で確かめられます。
1. 年金の手続きは3つ。順番と期限を先に確認する
年金を受けていた方が亡くなったあとの手続きは、次の3つです。
全体を先に見ておくと、年金事務所へ行く回数が減ります。
亡くなったあとの年金の手続き(全体の流れ)
| 手続き | 誰が | いつまでに | どこへ |
|---|---|---|---|
| 1. 年金の死亡届 | 家族の誰でも | 厚生年金10日以内/国民年金14日以内(マイナンバー登録済みなら原則不要) | 年金事務所(郵送可) |
| 2. 未支給年金の請求 | 生計を同じくしていた遺族 | 早めに(請求できる期間は5年) | 年金事務所(郵送可) |
| 3. 遺族年金の請求 | 条件を満たす配偶者・子など | 早めに(請求できる期間は5年) | 遺族厚生年金は年金事務所/遺族基礎年金だけなら市区町村役場 |
1と2は、実際には1枚の用紙で同時に済みます。
3の遺族年金は別の請求書が要り、ここがいちばん時間のかかる手続きです。
手続きの根拠と様式は、日本年金機構「年金を受けている方が亡くなったとき」にまとまっています。
2. 手順1:年金の死亡届を出す
年金を受けていた方が亡くなると、年金を止めるための届出が要ります。
期限は、厚生年金なら亡くなった日から10日以内、国民年金なら14日以内です(日本年金機構 年金Q&A)。
マイナンバーが登録されていれば、原則として出さなくてよい
日本年金機構にマイナンバーが登録されている方は、市区町村へ出した死亡届の情報が年金機構へ伝わります。
そのため、年金の死亡届は原則として不要です。
登録されているかどうかは、年金事務所かねんきんダイヤル(0570-05-1165)で確かめられます。
遅れると、受け取りすぎた年金を返すことになる
年金は亡くなった月の分まで支給されます。
届出が遅れて翌月以降の年金が振り込まれると、その分は後から返すことになります。
14日を過ぎてしまっても罰則があるわけではありません。気づいた時点で、次の未支給年金の請求とあわせて出してください。
3. 手順2:未支給年金を請求する
年金は偶数月に前の2か月分がまとめて振り込まれます。
そのため、亡くなった時点で、まだ受け取っていない年金がほぼ確実に残っています。
これを「未支給年金」といい、亡くなった方と生計を同じくしていた遺族が、自分の名前で請求します。
請求できる遺族には順位があり、配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、それ以外の3親等内の親族の順です。
用紙は「年金受給権者死亡届(報告書)兼 未支給年金・未支払給付金請求書」で、手順1の死亡届と1枚になっています。
年金証書、亡くなった方との続柄が分かる戸籍謄本、生計が同じだったことを示す書類(住民票など)、受け取る口座の通帳を添えて、年金事務所へ出します。郵送でも受け付けています。
相続放棄を考えている場合や、別居していた場合の扱いは、未支給年金は相続財産になる?受け取れる人と手続きの流れで詳しく解説しています。
4. 手順3:遺族年金を請求する
遺族年金は、亡くなった方の年金の加入状況と、残された家族の状況の両方で決まります。
請求しなければ受け取れません。役所への死亡届で自動的に切り替わることはありません。
誰が受け取れるか
遺族年金には「遺族基礎年金」と「遺族厚生年金」の2つがあります。
亡くなった方が会社員や公務員として厚生年金に加入していた期間があれば、遺族厚生年金の対象になります。
遺族年金を受け取れる人(優先順位の高い人だけが受け取れます)
| 年金の種類 | 受け取れる遺族 |
|---|---|
| 遺族基礎年金(国民年金) | 18歳になった年度の3月31日までの子がいる配偶者、またはその子(障害のある子は20歳未満まで) |
| 遺族厚生年金(厚生年金) | 配偶者と子 → 父母 → 孫 → 祖父母の順。夫・父母・祖父母は亡くなった当時55歳以上が条件で、受け取りは60歳から |
どちらも「亡くなった方に生計を維持されていた」ことが条件で、原則として年収850万円未満の方が該当します。
年金を受けていた父が亡くなり、母に18歳までの子がいない場合は、遺族基礎年金は対象外で、遺族厚生年金だけを請求する形になります。
父が自営業などで国民年金だけに加入していた場合は、遺族厚生年金がありません。この場合は「よくある質問」の寡婦年金と死亡一時金を見てください。
受け取れる条件の細かい内容は、日本年金機構「遺族年金ガイド 令和8年度版」(PDF)の2〜3ページにまとまっています。
どこへ、何を持って
遺族厚生年金は年金事務所か街角の年金相談センターへ、遺族基礎年金だけを請求する場合はお住まいの市区町村役場へ出します。
年金事務所での相談は予約制です。予約相談は電話(0570-05-4890)かインターネットで受け付けています。
遺族厚生年金の請求に必要な書類(基本のもの)
| 書類 | 補足 |
|---|---|
| 年金請求書(様式第105号) | 年金事務所の窓口か、日本年金機構のサイトで入手 |
| 戸籍謄本、または法定相続情報一覧図の写し | 亡くなった方との続柄を確かめるため |
| 世帯全員の住民票の写し | 生計が同じだったことを確かめるため |
| 死亡診断書の写し、または死亡届の記載事項証明書 | 死亡日と死因の確認 |
| 請求する人の収入が分かる書類 | 年収850万円未満の確認。マイナンバーを書けば省略できる場合あり |
| 受け取る口座の通帳など | 請求する人の名義 |
添付書類は、マイナンバーの登録状況や死因、子の有無で変わります。
行く前に、年金事務所かねんきんダイヤルへ「遺族厚生年金の請求で何が要るか」を確かめておくと、二度手間になりません。
請求書の書き方は、日本年金機構の記入案内(記入例と動画)で確かめられます。
いつから振り込まれるか
遺族年金は、亡くなった月の翌月分から受け取れます。
請求書を出してから年金証書が届くまでに1〜2か月、振込が始まるのはさらにその1〜2か月後です。
つまり、請求から最初の振込までは3〜4か月かかると見ておいてください。その間の生活費は別に見込んでおく必要があります。
ここまでの内容で、間違えやすい点を4つに絞りました。
-
父は70歳を過ぎていたから、遺族年金は出ない
老齢厚生年金を受けていた方が亡くなれば、年齢に関係なく遺族厚生年金の対象になります
-
母には自分の年金があるから、遺族年金はもらえない
65歳以上の方は、自分の老齢年金と遺族厚生年金をあわせて受け取れます。自分の老齢厚生年金にあたる額だけ、遺族厚生年金が調整されます
-
役所に死亡届を出したから、年金の手続きは終わった
止まるのは亡くなった方の年金だけです。遺族年金と未支給年金は、請求しないと受け取れません
-
遺族年金は2028年から5年で打ち切りになる
有期になるのは、子のいない配偶者のうち一定の年齢より若い方です。すでに受け取っている方と、60歳以降に受け取り始める方は変わりません
高知県で手続きをする場合
宿毛市、四万十市、土佐清水市、黒潮町、大月町、三原村にお住まいの方の窓口は、幡多年金事務所(四万十市中村東町2-4-10、電話0880-34-1616)です。
受付は平日の8時30分から17時15分までで、週の最初の開所日は19時まで、第2土曜日も9時30分から16時まで開いています。
高知市など他の地域の方は、お住まいの市町村を管轄する年金事務所へ。管轄は日本年金機構のサイトで調べられます。
5. つまずきやすいところ
戸籍は、相続の手続きと同じものが使える
遺族年金の請求に使う戸籍謄本は、亡くなった方との続柄が分かる範囲で足ります。
一方、預貯金の相続や不動産の名義変更では、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍が要ります。
先に相続用の戸籍をひとそろい取っておくと、年金の請求にもそのまま使えます。法定相続情報一覧図の写しを作っておけば、戸籍の束を何度も出さずに済みます。
戸籍の集め方は、相続・遺言手続きサポートのページで、当事務所が行政書士としてお手伝いできる範囲とあわせて案内しています。
母に65歳以上の年金がある場合の調整
母が65歳以上で自分の老齢厚生年金を受けている場合、その老齢厚生年金は全額受け取れます。
遺族厚生年金は、母の老齢厚生年金にあたる額が支給停止になり、差額だけが上乗せされます。
母の老齢基礎年金は、遺族厚生年金と並行して全額受け取れます。
母の老齢年金をまだ請求していない場合
母自身の老齢年金が未請求のままだと、遺族厚生年金の額の計算ができません。
遺族年金の請求と同時に、母の老齢年金も請求します。
亡くなった方に共済組合の期間がある場合
公務員や私立学校の教職員として共済組合に加入していた期間があっても、年金事務所に請求書を出せば、その期間の分もあわせて請求できます。
ただし、決定までに2か月以上かかることがあります。
6. 2028年4月から変わること
2025年に成立した年金制度の改正で、遺族年金の仕組みが2028年4月から変わる予定です。
いま受け取っている方の遺族年金は変わりません。60歳以降に受け取り始める方も、これまでどおりです。
変わるのは主に、子のいない配偶者のうち一定の年齢より若い方で、遺族厚生年金が原則5年の有期給付になります。その代わり、5年の間は加算がついて額が増えます。
また、子のいる場合の遺族基礎年金の加算額が増えるほか、父または母と暮らしている子も遺族基礎年金を受け取れるようになります。
この記事の読者の多くにあたる「年金を受けていた父が亡くなり、母が受け取る」場合は、改正の影響をほぼ受けません。
詳しい内容は厚生労働省「遺族厚生年金の見直しについて」で確かめられます。
7. よくある質問
Q. 遺族年金の請求はいつまでにすればよいですか
法律で定められた提出期限はありませんが、年金を受け取る権利は5年で時効になります。亡くなった月の翌月分からさかのぼって受け取れるのも5年分までなので、落ち着いたら早めに請求してください。
Q. 父は自営業で国民年金だけでした。母は何か受け取れますか
18歳までの子がいなければ遺族基礎年金は対象外ですが、国民年金には寡婦年金と死亡一時金があります。寡婦年金は、10年以上婚姻関係にある妻が60歳から65歳になるまで受け取れるもので、死亡一時金は保険料を36か月以上納めた方が亡くなったときの一時金です。どちらか一方を選ぶ形で、窓口はお住まいの市区町村役場です。
Q. 遺族年金に税金はかかりますか
遺族年金には、所得税も相続税もかかりません。一方、未支給年金は受け取った方の一時所得として扱われ、他の一時所得とあわせて50万円を超えると確定申告が必要になる場合があります。
Q. 死亡届を14日以内に出せませんでした。どうなりますか
罰則はありませんが、亡くなった月の翌月以降の年金が振り込まれていれば、その分を返すことになります。マイナンバーが登録されていれば届出自体が原則不要なので、まず年金事務所へ電話で確かめてください。
Q. 内縁の妻でも遺族年金を受け取れますか
婚姻届を出していなくても、事実上の婚姻関係にあり生計を維持されていた方は、遺族厚生年金の配偶者に含まれます。ただし、事実婚関係を示す書類が別に必要になるため、事前に年金事務所へ相談してください。
Q. 手続きを家族が代わりにできますか
受け取る本人以外が窓口へ行く場合は、委任状が必要です。請求書は本人名義で作り、口座も本人のものにします。母が高齢で外出が難しい場合は、郵送で出せるかどうかを含めて、事前に年金事務所へ確かめてください。
8. まとめ:3つの手続きを、この順番で
年金の手続きは、次の順で進めると抜けが出ません。
亡くなったあとの年金手続き 3つのステップ
- 年金の死亡届を出す(マイナンバー登録済みなら原則不要。厚生年金10日・国民年金14日以内)
- 未支給年金を請求する(死亡届と同じ用紙。生計を同じくしていた遺族が自分の名前で)
- 遺族年金を請求する(予約して年金事務所へ。戸籍・住民票・死亡診断書の写しを揃えて)
ここまでが、日本年金機構が案内している手続きの順番です。そのうえで、亡くなった方の加入歴や、残された方の年齢と年金の状況によって、受け取れる額や組み合わせは変わります。
迷う点があれば、年金事務所かねんきんダイヤルへ、年金証書を手元に置いて確かめてください。
当事務所では、社会保険労務士として遺族年金・未支給年金の確認と請求のお手伝いを、行政書士として戸籍の収集や相続手続きの整理を、ひとつの窓口で承っています。相談先を分けずに、年金と相続の順番をまとめて整理したい方は、まずは状況をお聞かせください。