未支給年金は相続財産になる?受け取れる人と手続きの流れを行政書士が解説
こんにちは、はしざき社会保険労務士・行政書士事務所の橋崎です。
相続の手続きを進めているご家族から、
「まだ受け取っていない年金があるのですが、これも相続財産になるのでしょうか」
「未支給年金は遺産分割協議の対象になりますか」
「相続放棄をしたら、未支給年金も受け取れなくなりますか」
といったご相談をいただくことがあります。
結論から言うと、未支給年金は亡くなった方の相続財産ではなく、要件を満たす遺族が自分自身の権利として請求できるものとされています。
そのため、相続放棄をした場合でも、未支給年金を受け取れる可能性があります。
この記事では、未支給年金の基本的な仕組みから、受け取れる人の範囲、相続放棄をした場合の扱い、税金の取り扱いまで、社会保険労務士・行政書士の視点から分かりやすく解説します。
この記事の執筆者
はしざき社会保険労務士・行政書士事務所 代表
橋崎 正
(社会保険労務士 / 行政書士 / 1級FP技能士)
鳥取市出身。愛媛大学法文学部法学科卒業。
こうち生活協同組合に32年間勤務し、配送業務および共済・保険業務に従事。
累計2,500件を超える相談対応の経験を持つ。
52歳で2級FP技能士・AFPを取得、53歳で1級FP技能士合格。
54歳で社会保険労務士試験に合格し、
2025年12月にはしざき社会保険労務士事務所を開設。
56歳で行政書士試験に合格し、2026年3月にはしざき行政書士事務所を開設。
高知県宿毛市を拠点に、障害年金・就業規則・相続に関する相談に対応。
「困ったときに気軽に相談できる存在でありたい」を理念に、
制度の説明にとどまらず、生活・仕事・事業に関する不安を整理し、
実務に即した支援を行っている。
この記事で分かること
- 未支給年金とはどのような制度か
- 未支給年金は相続財産になるのか、ならないのか
- 未支給年金を受け取れる人の範囲と請求順位
- 相続放棄をしても未支給年金を受け取れるか
- 未支給年金を受け取ったときの確定申告の要否
1. 未支給年金とは
未支給年金とは、老齢年金や障害年金、遺族年金などを受けていた方が亡くなったときに、まだ支払われていなかった年金分を指します。
公的年金は、亡くなった月の分まで支給される仕組みになっています。一方で、年金は偶数月に前2か月分をまとめて振り込む方式が基本のため、亡くなるタイミングによっては、まだ振り込まれていない年金が残っていることがあります。この残った分を、一定の遺族が請求できるのが未支給年金です。
未支給年金が発生しやすいケース
- 年金の振込前に受給者が亡くなった場合
- 年金額の改定や届出漏れなどにより、本来受け取れるはずだった分が未払いのまま残っていた場合
- 老齢年金だけでなく、障害年金・遺族年金を受けていた方が亡くなった場合
年金を受けている方が亡くなった場合、未支給年金の請求とあわせて「年金受給権者死亡届(報告書)」の提出も必要になります。死亡の届出が遅れると、年金が過払いとなり、後日返還が必要になることもあるため、早めの手続きが大切です。
2. 未支給年金は相続財産になるのか
相続の手続きを進めている中で、「未支給年金も遺産分割の対象になるのか」と疑問を持たれる方は多くいます。
この点については、最高裁判所の判決(平成7年11月7日)において、未支給年金を請求する権利は、亡くなった方の相続財産ではなく、遺族が自分自身の権利として請求するものであると判断されています。この考え方にもとづき、国税庁の取り扱いでも、未支給年金は相続税の課税対象にはならないとされています。
未支給年金と相続財産の違い(考え方の整理)
- 相続財産:亡くなった方が生前に持っていた財産で、遺産分割協議の対象になるもの
- 未支給年金:亡くなった方の財産ではなく、要件を満たす遺族が自分の権利として請求するもの
- そのため、遺産分割協議書に記載して分ける性質のものではないと整理されています
ただし、遺族が実際に受け取った未支給年金には、後述するとおり所得税(一時所得)が関係する場合があります。相続税と所得税は別の制度であるため、この違いを混同しないように注意が必要です。
3. 未支給年金を受け取れる人と請求順位
未支給年金を請求できるのは、亡くなった方と生計を同じくしていた遺族に限られます。単に親族であるというだけでは請求できず、生活の実態として生計をともにしていたかどうかが確認されます。
請求できる遺族の順位(考え方の目安)
- 1. 配偶者(事実婚など、事実上婚姻関係と同様の事情にあった方を含む)
- 2. 子
- 3. 父母
- 4. 孫
- 5. 祖父母
- 6. 兄弟姉妹
- 7. これら以外の3親等内の親族
先の順位の方がいる場合、後の順位の方は請求できません。また、同じ順位の方が複数いる場合は、代表者1名が請求する扱いになります。実際に誰が請求できるかは、家族構成や生活の実態によって判断が分かれるため、個別の状況を確認しながら進めることが大切です。
4. 別居していた家族の場合はどうなるか
「亡くなった親と別居していたが、生活費の援助や頻繁な行き来があった」というケースでは、生計同一の関係にあったと認められることがあります。この場合は、「生計同一関係に関する申立書」を提出し、状況によっては第三者による証明が必要になります。
別居していた場合に確認したいポイント
- 生活費の送金や仕送りの実績があったか
- 定期的な訪問や連絡など、生活面での関わりがあったか
- 住民票上の住所は別でも、実態として生活を支え合っていたか
生計同一の証明方法は、家族関係や生活状況によって必要な書類が異なります。「同居していないから請求できない」と自己判断せず、年金事務所や専門家に状況を伝えて確認することをおすすめします。
5. 相続放棄をしても未支給年金は受け取れるか
「借金などマイナスの財産が多いため相続放棄を考えているが、未支給年金も受け取れなくなるのか」というご相談もよくいただきます。
未支給年金は、2章で解説したとおり、亡くなった方の相続財産ではなく、遺族固有の権利として請求するものと整理されています。そのため、一般的には、相続放棄をした場合でも未支給年金を受け取れると考えられています。
ただし、相続放棄の手続き自体は、財産を一部でも処分・取得したとみなされると認められなくなる可能性がある、慎重な判断が必要な手続きです。未支給年金の受け取りが相続放棄の判断に影響しないかどうかは、個別の財産状況によって確認が必要になる場合があります。相続放棄を検討している場合は、早めに専門家へご相談ください。
6. 未支給年金の請求方法・必要書類・請求先
未支給年金は、「年金受給権者死亡届(報告書)兼未支給年金・未支払給付金請求書」を年金事務所や年金相談センターなどに提出して請求します。年金を受けている方が亡くなった場合、死亡の届出とあわせて手続きを行うのが一般的な流れです。
請求時に確認されることが多い書類(一般的な例)
- 亡くなった方の年金証書
- 亡くなった方と請求者の続柄が分かる戸籍謄本等
- 生計同一関係が確認できる書類(住民票の写しなど)
- 死亡を明らかにできる書類
- 受け取りを希望する金融機関の通帳等
必要書類は、亡くなった方の年金の種類や、請求者との続柄、同居・別居の状況によって異なります。実際の手続きの前に、年金事務所や年金相談センターへ確認しながら進めることをおすすめします。
7. 未支給年金を受け取ったときの税金の取り扱い
未支給年金は相続税の対象にはなりませんが、遺族が実際に受け取った未支給年金は、その受け取った遺族自身の一時所得として所得税の対象になる場合があります。
一時所得としての扱い(考え方の目安)
- 一時所得には50万円の特別控除があります
- 未支給年金やその他の一時所得の合計が50万円を超える場合、確定申告が必要になることがあります
- 相続税の申告とは別の手続きになるため、混同しないよう注意が必要です
実際に確定申告が必要かどうかは、未支給年金の金額や、他の所得の状況によって異なります。個別の税務判断が必要な場合は、税理士への確認をおすすめします。
8. 請求には期限がある(5年で時効)
未支給年金を請求する権利には時効があり、原則として5年で権利が消滅するとされています。相続の手続きは他にも確認すべきことが多く、後回しになりがちですが、未支給年金についても早めに請求しておくことが大切です。
9. 相続・遺言の手続きとあわせて整理したいこと
未支給年金の請求は、年金事務所に対する手続きですが、実際にはこれと並行して、相続人の確認、財産の整理、遺産分割協議書の作成など、相続全体の手続きを進める必要がある場合がほとんどです。
また、未支給年金のほかに、亡くなった方の年金の種類や家族構成によっては、遺族年金の請求が必要になるケースもあります。未支給年金と遺族年金は別の制度であるため、どちらの対象になるかを個別に確認することが大切です。
当事務所では、高知県幡多地域(宿毛市、四万十市、土佐清水市、黒潮町、大月町、三原村)を中心に、行政書士業務として、相続人調査、財産整理、遺産分割協議書の作成サポートなどを行っています。未支給年金の請求先である年金事務所とのやり取りは行政書士の代理対象外となりますが、相続手続き全体の整理や、必要な手続きの洗い出しについてはご相談いただけます。相続手続き全般については、相続・遺言手続きサポートのページもあわせてご覧ください。
10. よくある質問
Q. 未支給年金は相続財産になりますか?
最高裁判所の判決や国税庁の取り扱いでは、未支給年金は亡くなった方の相続財産ではなく、遺族が自己固有の権利として請求するものとされています。そのため、一般的な相続税の課税対象にはなりません。
Q. 未支給年金は誰が受け取れますか?
亡くなった方と生計を同じくしていた遺族が対象です。配偶者、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹、それ以外の3親等内の親族の順に優先順位があり、先順位の方がいる場合、後順位の方は請求できません。
Q. 別居していた家族でも未支給年金を受け取れますか?
生活費の援助や訪問など、生計同一の実態が認められれば受け取れる可能性があります。「生計同一関係に関する申立書」の提出など、別居の場合に必要な手続きがあるため、個別に確認することをおすすめします。
Q. 相続放棄をしても未支給年金は受け取れますか?
未支給年金は相続財産ではないため、一般的には相続放棄をしても受け取れると考えられています。ただし、相続放棄の判断に影響しないかは個別の財産状況によるため、早めに専門家へご相談ください。
Q. 未支給年金を受け取ったら確定申告は必要ですか?
受け取った未支給年金は一時所得として扱われる場合があります。他の一時所得とあわせて50万円を超える場合などは確定申告が必要になることがあるため、金額や状況に応じて税理士にご確認ください。
11. まとめ:未支給年金は相続とは別の視点で整理を
未支給年金は、亡くなった方の相続財産ではなく、生計を同じくしていた遺族が自分自身の権利として請求できる制度です。相続放棄をした場合でも受け取れると考えられている一方、受け取った金額は所得税(一時所得)の対象になる場合があるなど、相続税とは異なる整理が必要になります。
また、未支給年金の手続きは、相続人の確認や財産整理、遺産分割協議書の作成といった相続全体の手続きの一部として発生することがほとんどです。どこから手をつければよいか分からない場合は、まず状況を整理するところから始めることをおすすめします。
このコラムは、未支給年金に関する一般的な考え方を整理したものです。実際に受け取れるかどうか、必要な書類や税務上の扱いは、家族構成や年金の種類、個別の事情によって異なります。具体的な請求手続きについては年金事務所へ、税務上の判断については税理士へ、あわせてご確認ください。
参考情報
- 日本年金機構|年金を受けている方が亡くなったとき
- 日本年金機構|亡くなった方の未支給年金を受け取れるとき
- 日本年金機構|生計同一関係・事実婚関係に関する申立をするとき
- 国税庁|未支給の国民年金に係る相続税の課税関係
はしざき社会保険労務士・行政書士事務所
代表:橋崎 正(社会保険労務士 / 行政書士 / 1級FP技能士)
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